色指定が曖昧なとき、現場で何が起きるか
「黒っぽい色で」「落ち着いたグレーで」といった感覚的な言葉だけの指示は、実は現場にとって非常に判断が難しい指示です。色にはとてつもなく多くのバリエーションがあり、「黒」ひとつをとっても、艶のある漆黒から、少し青みがかった黒、マットな灰黒まで無数に存在します。指定が曖昧なままだと、現場では使用環境や色彩、色調がわからず、どの色を選べばよいか判断できません。
結果として起きるのが「在庫色で塗る」という対応です。在庫としてすでに用意されている色の中から、担当者が「おそらくこの色だろう」という判断で選んでしまうのです。この判断は決して現場の怠慢ではなく、曖昧な指示に対する合理的な対応ともいえます。しかし、これによってお客様が思い描いていたイメージと、実際に仕上がった製品の色味・ツヤとの間に捉え方の差が生じ、「イメージと違う」というトラブルにつながってしまいます。
正しい色指定の書き方
こうしたズレを防ぐために重要なのが、言葉(主観)ではなく「共通の規格(数値や現物)」で伝えるという考え方です。具体的には、以下のような指定方法があります。
- 日塗工番号:日本塗料工業会が定める色見本帳の番号で、業界内で広く共通言語として使われています
- カラーナンバー:塗料メーカー独自の色番号
- 現物(色見本):実際にその色で塗られたサンプルそのものを共有する方法
これらはいずれも、担当者の主観に左右されず、誰が見ても同じ色として認識できるという利点があります。特に日塗工番号は業界標準として広く浸透しているため、初めて取引する塗装会社であっても、認識のズレなく色を伝えることができます。
色だけでは決まらない場合がある
色番号を正確に指定したとしても、それだけでは仕上がりのイメージが完全には伝わりません。同じ色番号であっても、ツヤの度合いによって見た目の印象は大きく変わるためです。「表面の仕上がりもセットで伝える」ことが欠かせません。
- ツヤの度合い:全ツヤ、半ツヤ、3分ツヤ、艶消しなど、光沢の段階を明記します
- 塗装肌:表面をツルツルに仕上げるのか、あえてザラザラとした質感(サテンなど)にするのかも、製品の印象を大きく左右します
また、色は決まっているものの手元に色見本がない、あるいはオリジナルの色にしたいといった依頼にも対応可能です。日塗工の色見本から選定する方法、在庫色から近いものを選定する方法、あるいは一から調色を行う方法など、状況に応じた選択肢があります。なお、表面の素地感は塗料の種類と施工技術の組み合わせによって変わってくるため、仕上がりのイメージがある場合は早い段階で共有することをおすすめします。
特注調色のコストと在庫色を使う判断
図面には「在庫色でよければその旨を書く」「色番号があれば正確に書く」というように、どちらの方針かを明記するのが、結論としてもっともわかりやすい書き方です。在庫色を使えばコストと納期を抑えられますが、特注調色にはそれに応じたコストと時間がかかります。この判断を早い段階で行い、打ち合わせを経て塗料選定が決まり次第、速やかに図面の改訂を行うようにしましょう。曖昧なまま進めてしまうと、後工程での手戻りにつながりやすい点に注意が必要です。



