日常試験と信頼性・耐久性試験の違い
塗装の品質基準は、大きく2つの目的に分けて実施するのが一般的です。
- 日常試験:日常的な検収(ロットごとの抜き取り検査)で行う、納品のたびに確認する項目
- 信頼性・耐久性試験:新規立ち上げ時や定期監査で行う、製品が実使用環境に耐えられるかを確認する項目
この使い分けを理解しておくことが、無駄のない品質管理の第一歩になります。
① 外観(見た目の品質)
表面に塗装特有の不良がないか、目視チェック(または限度見本との比較)によって確認します。代表的な不良には以下のようなものがあります。
- ブツ、ゴミ:塗料に混入した微細なホコリ、浮遊ホコリ、ライン上落下ブツ
- タレ:塗料が厚すぎて下方に流れて固まった跡
- ハジキ、ピンホール:油分などが原因で、塗料がクレーター状に弾けた穴
- 肌荒れ(ゆず肌):表面がレモンの皮のように凸凹している不具合
- スケ(隠蔽不良):塗膜が薄すぎて、下地(金属の色など)が透けて見えている状態
② 塗膜性能
組み立て時や日常使用で、塗装が簡単に傷ついたり剥がれたりしないかを評価する項目です。
膜厚測定試験
「電磁式・渦電流式膜厚計」と呼ばれる小型のセンサーを塗装面に当て、塗装の厚み(μm単位)を測定します。図面指示通りの厚みが確保されているか、寸法公差を外れていないかを確認するのが目的です。
密着性試験(碁盤目・クロスカット)
塗膜にカッターで縦横1mm(または2mm)間隔の切れ目を入れ、100マスの碁盤目を作ります。その上に規定の粘着テープをしっかり貼り、一気に引き剥がして何マス剥がれずに残ったかを評価します。塗装が下地にしっかり密着し、ペリペリと剥がれてこないかを確かめるための試験です。
※製品そのものを傷つけたくない場合は、同じ条件で塗った「テストピース(試験板)」を同時に塗装し、それを用いて試験します。
塗膜硬度
JIS規格に基づき、規定の硬さの鉛筆(4B〜6Hなど)を押し当てて表面を引っかく「鉛筆引っかき硬度試験」が一般的です。「Hでキズなし」「2Hでキズ発生」なら、この塗装の硬度は「H」と判定されます。
③ 耐久性(環境への強さ)
製品が実際に使われる環境に耐えられるかを評価する項目で、量産前の「初期評価」や「定期試験」でよく用いられます。
耐食性・防錆性試験(塩水噴霧試験)
35℃に保たれた試験機の中に製品を入れ、5%の塩水を噴霧し、数百〜数千時間連続で浴びせ続けます。あらかじめカッターで「×(クロスカット)」のキズを入れておき、そこからどのくらいサビが広がるかも観察します。屋外や沿岸部で使用した際の「防錆性(サビにくさ)」を評価するための試験です。
図面や仕様書に落とし込む際のポイント
量産品の図面に書く場合は、「どのレベルを合格とするか」を1行で明記するのがスマートです。
【図面への記載例】
・膜厚試験:15μm〜または15μm〜25μmであること
・耐食性:◯時間以上であること
・硬度:鉛筆硬度試験においてH以上であること
すべての項目を毎回検査するのは現実的ではありません。以下のように、検査のタイミングで項目を使い分けて基準書を作ると、コストを抑えつつ確実な品質管理ができます。
- 毎回の納品(全数・抜取検査):外観/膜厚/密着性(テストピース)
- 最初の試作・仕様変更時のみ:耐食性(塩水噴霧)/硬度
まとめ
塗装の品質は、感覚ではなく「数値」で管理することが、手戻りやクレームを防ぐ最短ルートです。外観・塗膜性能・耐久性という3つの軸で検査項目を整理し、検査頻度にメリハリをつけることで、品質と コストのバランスが取れた管理体制を作ることができます。



